「のぼうの城」のあらすじ
野村萬斎主演で話題を集めた「のぼうの城」は、TBS開局60周年記念作品として公開されました。
野村萬斎の圧倒的な個性と演技力が支配する作品です。
「でくのぼう」と呼ばれた温和な殿様が危機を脱するために奮闘する物語。
「でくのぼう」を略して「のぼう様」と呼ばれています。
この作品は犬童一心と樋口真嗣の共同監督で製作されました。
第36回日本アカデミー賞で多数の賞を受賞するなど、評価も高い作品です。
主な出演者
監督:犬童一心、樋口正嗣 出演:野村萬斎(成田長親)、榮倉奈々(甲斐姫)、成宮寛貴(丹羽長秀)、佐藤浩市(正木丹羽守利英)、上地雄輔(石田三成)、山田孝之(大谷吉継)、尾野真千子(ちよ)、山口智充(柴崎和泉守)、西村雅彦(成田氏長)、市村正親(豊臣秀吉)ほか
秀吉からの命令
忍城は、周囲を湖で囲まれた浮城とも称されている名城です。
その忍城の城主・成田氏一門の成田長親は、領民から「でくのぼう」を称して「のぼう様」と呼ばれていました。
その温厚な性格から皆に親しまれる殿様です。
豊臣秀吉は、天下統一を目前にしていました。
秀吉は、関東最大勢力でもある北条氏の小田原城攻めを企んでいます。
それに対抗するために、北条氏政は関東各地の城主に籠城に参加するように通達し、忍城もその一つでした。
忍城城主である長親の従兄弟、成田氏長は手勢の半分を連れて小田原城へ赴きました。
しかしこれには伏線がはられていたのです。
氏長は裏で、豊臣側への降伏を内通していました。
ところが秀吉は石田三成に、「武州・忍城を討ち、武功をたてよ」と命じます。
三成は成田氏が降伏を決めていることを知っていたのですが、戦を仕掛けようとしています。
そして大軍勢を率いて、忍城に迫ったのです。
戦を仕掛けるために三成が遣わした男は、あえて傲慢な振る舞いをして煽ります。
総大将・長親はまんまと仕掛けにはまり、戦を決意してしまったのです。
石田三成との戦い
総大将・長親は、豊臣側との戦を宣言します。
一方で、当主氏長から降伏をすると知らされていた重臣たちは驚きます。
彼らは早めに白旗を上げて、ことなきを得ようとしていたので、初めは混乱しました。
しかし重臣たちも覚悟を決め、忍城籠城戦は始まります。
三成が率いるは、2万越えの大軍です。
一方の成田勢は、農民らを含めても3千強と圧倒的に不利です。
しかし総大将・長親は将たる武勇も知謀も持たない、いわゆるその名の通りの「でくのぼう」のような男です。
相変わらず危機が迫っているというのに、のんびりと構えていました。
長親にはたった一つだけ、他人に好かれる才能とりわけ民からは異常に人気が高かったのです。
そんな長親のことを、昔から慕っている姫がいました。
それは氏長の娘で甲斐姫という、美しい姫でした。
しかも甲斐姫は美しいだけではなく、武勇にも優れていたのです。
実は長親が戦を決意した理由は、甲斐姫だったのです。
三成から送られた使者の一言「甲斐姫を秀吉に差し出せ」という命に、従えなかったからでした。
甲斐姫は長親の温和でありながらも男らしい部分に気がついており、また長親もそんな彼女のことを思っていました。
忍城水攻め
忍城側は地の利と士気の高さから、緒戦を圧勝に収めます。
しかし業を煮やした三成も、次の策を練ります。
三成は近くを流れる利根川を利用した、水攻めを思いつきました。
そのため、総延長28キロメートルにも及ぶ石田堤を建設します。
そして遂に水攻めが始まり、忍城と城下本丸を除いて城下を含め、水に沈んでしまいました。
忍城内に農民たちも入れますが、あまりの人数のため狭さと疲労で、大変な状況になります。
少しづつ疲弊していく兵と農民たちを見て、長親は忍城を取り囲む湖に船を出しました。
そしてなんと、敵兵の前で田楽踊りを披露したのです。
そんな長親の田楽踊りを見ていた甲斐姫や家臣は、長親の本意に気がつきます。
長親は自らが犠牲になり、戦を終わらせようとしていたのです。
三成は雑賀衆に、田楽踊りを踊る長親を狙撃するように指示します。
長親は撃たれてしまいますが、覚悟を決めた長親の目を見た雑賀衆は驚き、弾が反れて運よく一命を取り留めました。
その頃、堤建設のために城に入らず城外にいた農民たちは、長親が撃たれたことと、耕していた水田が台無しになったことへの怒りから暴れ出します。
そして石田堤を壊す者が現れ堤防は決壊をして、三成の水攻めは失敗しました。
忍城開城
堤防が決壊したことで、忍城の周りの水が引きました。
石田三成の大群が、総攻撃を仕掛けてきます。
忍城の兵たちも覚悟を決めたその矢先に、小田原城が落城します。
そして小田原城落城の知らせが、成田勢にももたらされました。
忍城も、遂に開城することになったのです。
しかしながら、小田原城が落ちるまでの間、持ちこたえられた支城は忍城だけでした。
石田三成が直接忍城に入場し、長親たちを褒めました。
そして成田氏一門をとり潰さずに残す条件として、甲斐姫を豊臣秀吉の側室として差し出すことを伝えます。
その提案に快諾しました。
家を守るため、長親を守るために秀吉の元へ行くと承諾してしまうのです。
時は経ち、甲斐姫は秀吉に寵愛される側室となっていました。
そして父親である氏長は、それに伴い出世をしていきます。
一方の長親は出家をしていました。
出家をして余生を静かに過ごそうと思ったのです。
忍城は現在も、埼玉県の行田市で本丸跡を見ることができます。
映画ライターkokoの一言
「のぼうの城」というより、野村萬斎の「のぼうの城」と言ったほうが良いでしょうか。
野村萬斎ワールドにつつまれてのストーリー展開です。
最初は独特な言い回しなどに少し違和感を感じましたが、気がつくとその世界観に吸い込まれてしまいました。
長親の心の優しさや平和感が伝わってきて、見終わった後も心が暖かくなる、そんな作品でした。
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