「人魚の眠る家」のあらすじ
「人魚の眠る家」は2018年に公開された日本映画です。
小説家・東野圭吾のデビュー30周年を記念して書かれた同名小説を原作とした作品です。
別居中の夫婦である薫子と和昌は離婚を予定していましたが、ある時に娘・瑞穂が事故に遭い意識不明の重体になってしまいます。
その後、薫子たちは医師から瑞穂が脳死状態であることを告げられ、一時は臓器提供の決断を下そうとも考えます。
しかし薫子は、瑞穂の指が微かに動いたのを見て、瑞穂を自宅で介護しようと決めるのでした。
主な出演者
監督:堤幸彦 出演:篠原涼子(播磨薫子)、西島秀俊(播磨和昌)、坂口健太郎(星野祐也)、川栄李奈(川嶋真緒)、山口紗弥加(美晴)、田中哲司(進藤)、田中泯(播磨多津朗)、松坂慶子(千鶴子)ほか
薫子の娘・瑞穂がプールの事故に遭う
友達と遊びながら家に帰る宗吾という少年が投げたボールが、ある大きな屋敷の庭に入ってしまいました。
屋敷の表札には「播磨」とあり、きれいな庭園の中に車椅子に座っている可愛らしい少女がいました。
少女は眠っているように見えますが、少年は屋敷の前に来た時、その少女が母親を呼んでいる声を聞いた気がしました。
夫と別居中の播磨薫子は、大きな屋敷の中で娘の瑞穂と息子の生人の3人だけで暮らしていました。
別居の原因は夫・和昌の不倫で、瑞穂が小学校の受験を終えたら離婚する予定になっています。
小学校受験に備えて保護者面接の練習をするために、薫子と和昌は子どもたちを薫子の母・千鶴子と妹の美晴に預け、2人で瑞穂が通っている塾で落ち合うことになっていました。
しかし和昌は、模擬面接が始まる時間ぎりぎりになって姿を現すのでした。
さらに模擬面接が始まったというのに和昌は携帯の電源を切っておらず、電話が掛かってきました。
電話は病院からで、瑞穂が救急搬送されたというのです。
薫子と和昌は急いで駆け付けましたが、瑞穂は意識不明になっており、チューブに繋がれ痛々しい状態になっていました。
薫子が模擬面接に出掛けている間、千鶴子と美晴、子どもたちは市民プールで遊んでいましたが、瑞穂が溺れてしまったのです。
瑞穂が生きていると確信する薫子
薫子と和昌は、脳外科医から残酷な事実を突きつけられます。
溺れた瑞穂は、呼吸が止まっている時間が長かったため脳死状態になっており、心臓は動いていても意識が回復する見込みがないと言うのです。
脳死の場合、日本では死を受け入れれば死亡となり、受け入れなければまだ生きている状態だと判断されます。
それはつまり、薫子たちが瑞穂の生き死にを決めることと同じでした。
さらに医師は臓器提供について説明しますが、和昌は拒否反応を示し怒りを向けます。
少し落ち着きを取り戻した和昌は、父親の多津朗にも相談することにしました。
一時は、優しい瑞穂なら臓器提供するだろうという考えで返事をしようとします。
しかし、弟の生人が瑞穂に呼びかけた時に指が動いたのを見て、薫子は瑞穂が確かに生きていると実感するのでした。
結局、臓器提供を取りやめることにしますが、医師からは指の動きは脳死状態の患者の反射だと言われます。
それでも薫子には、瑞穂が生き続けたいと願っているように感じました。
和昌は自分が社長を務める会社で、最先端技術を研究している星野という研究員に注目しました。
人工的に笑顔を作らされる瑞穂
星野が研究している分野は、体が動かせない人が脳波を使って動けるようにする技術でした。
その技術を脳死状態の瑞穂に応用し、人工的に電気信号を送ることで体を動かせるようになる可能性がありました。
和昌は星野に娘を被験者にしてほしいと頼み、星野は張り切って研究に没頭しますが、同僚からは脳死状態の人間に技術を利用することを疑問視する声もありました。
手術を受けた瑞穂は次第に元気そうになり、やがて自分の力で呼吸ができるようになりました。
意識は戻らないながらも、瑞穂はまるで眠っているように見えるのでした。
薫子のたっての希望で離婚を取りやめ、薫子は瑞穂を自宅で看ることにしました。
彼女の母親・千鶴子は、自分がプールに連れて行ったために瑞穂の事故が起きたと罪悪感に苛まれており、積極的に瑞穂の世話をします。
しかし千鶴子の拙い手際に、神経が昂っている薫子が当たり散らすこともありました。
星野は研究を続け、ついに瑞穂の手足や表情を動かすことに成功します。
薫子は星野に感謝しますが、その後久々に会った和昌は、人工的に笑顔を作らされている瑞穂を見て「人間扱いされていない」と憤ります。
この子を殺したら罪になるのか
息子・生人は小学校へ上がりますが、入学式に瑞穂を連れて行ったことで同級生から奇異な目で見られてしまいます。
次第に生人は塞ぎこみ、瑞穂を避けるようになりました。
生人の誕生会には誰も来てくれず、薫子が理由を聞くと生人は、同級生が眠り続けている瑞穂を気持ち悪がったからだと言うのでした。
さらに生人が「お姉ちゃんはもう死んでいるのに、お母さんが生かしているんだ」と口にしたことで薫子は激高し、思わず生人を叩いてしまいます。
その場にいた和昌や姪の若葉も生人と同様に考えていることを悟り、薫子は包丁を掴みます。
そのまま瑞穂の部屋へ入り、薫子は警察に電話しました。
警察が到着すると、薫子は瑞穂に包丁を向け「この子は生きているのか死んでいるのか、殺したら罪に問われるのか」と問います。
和昌は殺さないでくれと言って瑞穂を庇い、薫子は包丁を落としました。
そこへ瑞穂と同い年の従姉妹・若葉が泣きながら、「瑞穂ちゃんは私の身代わりになって死んだ」と告白します。
皆で市民プールへ行ったあの日、水の中に玩具の指輪を落とし、瑞穂と若葉は潜って取ろうとしました。
結局届かず若葉は水面に上がりましたが、瑞穂は戻れなくなってしまったのでした。
若葉の突然の告白に一同が驚きました。
その後、薫子は夜中に目を覚まし、瑞穂の顔を見て最期が迫っていることを感じて別れを告げます。
瑞穂の心臓は宗吾という少年に移植され、宗吾は呼ばれるようにして播磨家の跡地へと赴くのでした。
映画ライターもじゃの一言
内容の濃い映画でした。
もし家族の生き死にを決定する立場になったら、自分ならどうするだろうかと考えてしまいました。
確かに、人工的に笑顔にさせられている瑞穂は人間の扱いをされていないと感じますが、それも薫子が娘を愛するからこそです。
誰も彼女を責められないですし、難しい問題だなと思いました。
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