「里見八犬伝」のあらすじ
「南総里見八犬伝」は江戸時代後期に大流行した、読本と呼ばれるエンターテイメント文学を代表する作品であり、28年にわたって書きつがれた大長編冒険ファンタジーですが、この作品を独自の解釈で描いた新解釈の映画です。
姫を守る8人の選ばれし者たちが、葛藤や事件に翻弄されながらも結束し、固い絆で結ばれて共に戦っていく様子を描き、ラブストーリーを基軸に据えています。
城を攻め落とされ唯一生き残った静姫が、里見家と玉梓の100年に及ぶ因縁を知らされます。
この因縁を解くため、八犬士を従えて立ち向かっていくというストーリーです。
主な出演者
監督:深作欣二 出演者:薬師丸ひろ子(静姫)、真田広之(犬江親兵衛)、千葉真一(犬山道節)、夏木マリ(玉梓)、目黒祐樹(蟇田素藤)ほか
一人生き残った里見の姫・静姫は武装して逃げていく
舞台は室町時代の日本、安房国(現在の千葉県)になり、このあたり一帯を治めていた里見家の城が攻め落とされ、城内にいた人間は皆殺しにされてしまいます。
里見家を滅ぼしたのは、蟇田一族でした。
蟇田一族は100年前に里見家によって滅ぼされ、この恨みをはらすために復讐として里見家を滅ぼします。
里見家を滅ぼした蟇田一族の息子、蟇田素藤と妖婦・玉梓が城に入ると、そこには「御霊様」という悪霊の魔像がありました。
里見家の復讐を誓った玉梓は、御霊様へ里見家の血を捧げるために、里見家で唯一生き残った静姫を殺すように追手を向かわせます。
静姫は共に城から抜けだした忠人たちと逃げるのですが、途中で玉梓の軍勢に忠人たちが全て殺されてしまい、静姫は仕方なく慣れない山道をたった一人で逃げることになります。
あまりの空腹に耐え兼ねた静姫は、炭焼小屋に忍び込んで食料を探します。
するとそこへ村の若者の犬江親兵衛が現れて食料と水を分けてもらい、なんとか空腹を免れました。
男装していた静姫でしたが女だと気付かれてしまい、その場で押し倒されてしまいます。
間一髪のところで2人の山伏が現れて静姫を救出し、難を逃れました。
しかし里見の静姫を捕らえれば褒美が貰えると知った親兵衛は、静姫をなんとか捕まえようと山中に罠を仕掛けます。
100年の呪いが時を経てやってくる
救出された静姫は、犬山道節、犬村大角と名乗る2人の山伏と共に、山中で火を囲みながら今回の里見家が滅ぼされた事件の発端について知らされます。
2人は静姫に一つの絵巻物を手渡しました。
その絵巻物には、100年前の当時悪政をしていた蟇田定包らを倒す、里見家当主義実の姿が描かれていたのです。
今回の事件は遡ること100年前、里見家が蟇田家一族を打ち滅ぼしたことがきっかけとなり起こったものでした。
悪政をしていた蟇田定包の妻である玉梓は、殺される前に呪いの言葉をかけて絶命します。
里見家当主義実は、しばらくしてから戦いに負けそうになり、飼い犬であった八房に敵将軍の首を取ってきたら娘の伏姫を妻として与える、と冗談を言います。
そんなことは難しいと思っていた義実でしたが、八房は本当に敵将軍の首を打ち取ります。
義実は仕方なく約束通り八房に伏姫を妻として与えるのですが、伏姫を取り戻すために鉄砲隊を差し向けます。
八房に当たりそうになったところを伏姫が庇い、発砲された弾が伏姫に当たってしまいました。
すると不思議なことに、彼女の体内から八つの光り輝く霊玉が飛び出したのです。
伏姫は「100年後にこの玉を持った八人の犬士が里見の伏姫を奉じて玉梓の呪いに打ち勝つでしょう」と予言を遺して死んでしまいます。
これが100年前に起きた事件の発端でした。
霊玉を携えた新たな同志、仲間が加わる
静姫は、道節と大覚に連れられて小さなお寺にやってきます。
そして大覚の母も遅れて来るのですが、様子がおかしいことに気づきます。
その後、大覚の母はいきなり巨大ムカデに姿を変え、静姫を襲うのでした。
大覚の母は既に玉梓の手によって殺害されてしまい、身体を乗っ取られていたのです。
そこへ婚礼を終えた信乃と毛野も加わり、戦いが始まりました。
信乃と毛野は、それぞれ霊玉を手にしていました。
巨大ムカデを倒した道節、大覚、信乃、毛野の四人は霊玉を手に入れて同志となります。
静姫も自分が100年前、絵巻物に記された里見家の子孫であること、また8人の犬士と共に戦うという決意を固めます。
そして一行は、残りの四人の同志を探して旅を続けるのでした。
しかし静姫は、親兵衛が山中に仕掛けた罠にかかって拉致されてしまいます。
静姫を捕まえた親兵衛は、これで褒美が貰えると上機嫌でしたが、蟇田の軍勢によって焼かれた村や幼い子供が切り殺されている姿を目の当たりにして心を入れ替えます。
そして静姫は、新たな同志である犬田小文吾と犬川荘助に出会い、他の道節たちと合流して旅を続けるのでした。
静姫は持っていた笛を親兵衛に渡すと、彼がこれ以上戦いに巻き込まれないようにと別れを告げます。
八犬士の最終決戦。最後は親兵衛と静姫が結ばれる
大覚たちに別れを告げられた親兵衛は、玉梓の軍勢に捕らえられ、城へと連行されます。
そこで親兵衛の母親が、実は玉梓だと知らされるのでした。
親兵衛は、玉梓の怨念を背負って転生した息子だったのです。
その事実を受け入れられない親兵衛は、静姫から貰った笛を思い切り吹き鳴らします。
すると不思議なことに玉梓が苦しみだし、素籐が親兵衛を殺そうとします。
しかし間一髪のところでそれを阻止したのが、蟇田家に代々使える侍の犬飼現八でした。
現八は親兵衛が吹いた笛の音で、八犬士としての心を呼び覚まされ、親兵衛を連れて城を出ます。
現八は、霊玉を手にした同士として迎えられ、静姫と親兵衛は愛を確かめ合います。
そのときに、新兵衛の手元にも霊玉が現れます。
最後の同士は、親兵衛だったのです。
しかし突然現れた大蛇によって拉致され、静姫は玉梓の手に落ちてしまいます。
八犬士は静姫の救出と玉梓の怨念を打ち砕くため、城へと馬を走らせるのでした。
城に侵入した八犬士たちを待ち構えていたのは、手強い敵の軍勢でした。
死闘を繰り広げながらも最後に残ったのは、親兵衛たった一人しかいません。
親兵衛は玉梓を弓矢で突き刺し、100年にわたって呪われた怨念がついに打ち砕かれます。
やっと役目が終わった、と立ち去る親兵衛を追いかけてきたのは静姫でした。
静姫は自分の身分を捨てて、親兵衛と共に暮らすことを誓ったのでした。
映画ライターMRMの一言
捕まえた静姫を売り渡そうとしていた親兵衛が、八犬士の最後の一人だったという展開は「やっぱりな」という感じでした。
最後は、親兵衛以外の7人の犬士が全員滅ぼされてしまう点や、100年の呪いを解き、遂に2人が結ばれるという展開もありがちなように思えましたが、ドキドキさせられる冒険ファンタジーに仕上がっていると思います。
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